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夢の旅路

曲山 浩 

「どうしたの」 驚く声に夢から覚め

草木もない石の欠けら 突き出た坂道をのぼり

赤錆びたトタン板の掘っ立て小屋に入った

古びた櫓がうす暗く聳え

憑かれたように上りきると

天井に打ち残された釘に頭蓋をぶつけ

ながれ落ちる血を恐れながら降りだしたが 

横板は剥がれ落ち

眼下に奈落の闇が待ち受けていた

いつの間にこんな高みにまで上っていたのだろう

憂悶にも似た自棄と疲労とに眩暈し

奈落へ墜ちるその間際

留め金を捕まえ命乞えの悲鳴をあげ

宙づりとなって喘いだ

「どうしたの」 

遠くから驚きの叫び声がしていた

目をひらくと家人の指先

命綱を握っていた

水の浅瀬よりも低い

並べられた家人との

薄い夏布団の狭間で

醜悪な狂気がゆれまがった気違いとなり

物狂いの地獄で格闘していたのだ

不明瞭とも思われる事態ではあったが

なるべくしてなったのだろう

端からみれば狂おしくも

滑稽なことではあったが

他言を許さない狂気であった

朝の窓をながめた

たなびく空

風が浮き

ひかりのガラスを舟かげがとおりぬけていった

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